「テレワーク」を知る
1.1 テレワーク
1.テレワークの定義
テレワークとは、「情報通信技術(ICT: Information and Communication Technology)を活用した時 間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方」1)、また は「情報・通信技術の利用により時間・空間的束縛か ら解放された多様な就労・作業形態」2)と定義されま す。これは、「tele=離れた場所」と「work=働く」 をあわせた造語であり、リモートワークと同義語で使われることが多いです。
2.テレワークの種類
テレワークは、働く場所によって名称が多様です。 代表的な例として、自宅利用型テレワーク、モバイル ワーク、施設利用型テレワーク、ワーケーション、 Small Office Home Office などがあります3)。
①自宅利用型テレワーク
「在宅勤務」ともよばれ、自宅を就業場所とする働 き方です。利点は、通勤時間の削減や、移動による身 体的負担の軽減などがあり、時間の有効活用ができま す。在宅勤務制度を導入している日本企業では、週1 −2日の頻度で実施するのが一般的です1)。 また、「部分在宅勤務」という1日の一部を在宅勤 務で行う制度を導入している企業もあります。このよ うな柔軟な働き方により、従業員が子供の行事への出 席や役所への手続きを合間に行ったり、早朝 や深夜に 海外との web 会議をする分日中の業務時間を調整し たりと、多様な働き方が可能になっています。
②モバイルワーク
電車や新幹線、飛行機などの交通機関の移動中に行 うものです3)。顧客先やカフェ、ホテル、空港のラウ ンジなどを就業場所とする働き方も含みます。利点 は、時間の有効活用に加えて、業務の効率化が挙げら れる点です。 特に、営業職など外出の多い業務においては、隙 間時間や待機時間に業務を行うことができます。ま た、業務先と自宅間の行き来を職場を経ずに直にで きるので、ワークライフバランスの向上にも効果が あります。1)
③施設利用型テレワーク
施設利用型テレワークには、企業のサテライトオ フィスなどの「専用型」や一般的なコワーキングス ペースなどの施設を利用して行う「共用型」のものが あります。どちらも、企業が就業場所を規定する場合 も、個人で選択する場合も含みます。 専用型のサテライトオフィスは、自社や自社グルー プ専用で利用するオフィスであり、営業活動や出張の 間に、または在宅勤務の代わりに自宅近くのオフィス で勤務するなどの働き方があります。なかには、既存 の社内にサテライトオフィスを設置する場合と、社外 に自社の事業所とは別に設置する場合があります。 一方で、共用型は、コワーキングスペースやシェア オフィスと呼ばれ、複数の企業や個人事業主が共有す る職場のことを指します。当初はフリーランスなどの 個人事業主の利用が主でしたが、企業がこれらの施設 と契約して、従業員の職場として活用することも増え ています1)。
④ワーケーション
休暇先のリゾート地などで、休暇を楽しみなが らテレワークを行うことです。「work =働く」 と「vacation =休暇」を組み合わせた造語です。 「Business =仕事」と「leisure =余暇」を組み合 わせたブレジャーと呼ばれるものも含みます。ブレ ジャーは、観光庁によると「出張等の機会を 活用し、 出張先等で滞在を延長するなどして余暇を楽しむこ と」と定義されています4)。
⑤ Small Office Home Office (SOHO)
SOHO とは、自宅などをオフィスにする個人事業 主などの働き方のことであり、テレワークの一形態と して位置付けられています2)。利点は、他の形態と同 様、ワークライフバランスの実現や、企業の生産性向 上、コスト削減などです。加えて、通勤の負担が大き い、育児者や高齢者、障害者などに適していること や、地方で都市部と同じような業務が行えること、災 害時の代替オフィスとして機能することなど、有用性 が注目されています。
3.テレワークの定義の問題点
政府のテレワークの定義が、昨今の急激な ICT の 技術革新やサービスの多様化、高度化に対応しきれて おらず、その実態を反映できていないという指摘があ ります2)。2002年以降、国土交通省が継続的に実施 している「テレワーク人口実態調査」で用いられる ICT 環境の条件が10年以上不変でることや、在宅以 外の個人事業主がテレワークの分類に含まれていない ことなど、社会通念との乖離が問題視されています
【参考文献】
1)テレワーク総合ポータルサイト.テレワークと は.厚生労働省, https://telework.mhlw.go.jp/telework/ about/(2022年9月5日閲覧) 2)市川宏雄(2015)新たな価値創造の仕組みづく り.日本テレワーク学会(編者),テレワークが 未来を創る:働き方改革で実現するトランスボー ダー社会.株式会社インプレス R&D,6-17. 3)一般社団法人日本テレワーク協会.テレワークと は. https://japan-telework.or.jp/tw_about/ (2022年9月5日閲覧) 4)新たな旅のスタイル:ワーケーション&ブレ ジャー.企業向けパンフレット(簡易版). 国土交通省観光庁,https://www.mlit.go.jp/ kankocho/workation-bleisure/img/wb_ pamphlet_simple.pdf(2022年9月5日閲覧) (藤川 真由)