障害者雇用におけるテレワーク導入企業の動向とその可能性について知る

ここでは、障害者雇用におけるテレワーク導入企業の動向とその可能性について知ることをねらいとして以下の3点を紹介します。

１．テレワーク導入のメリットと求職者の可能性

企業がテレワークで障害者雇用を行うメリットは以下の3点があります。

１．採用に優位性をもたらす
２．採用の可能性の拡大につながる
３．障害者にとって働きやすい環境を構築することができ、定着につながる。

この点は、求職者にとってもテレワークの働き方はメリットが大きく、結果として上記のようなメリットに繋がります。
　以下に具体的なメリットについてご紹介します。

通勤負担を軽減できる

従来の「出社」前提の働き方は通勤時の負担軽減が必要で、移動に困難がある方のフレックス制度、移動時間が負担になる方のための近い通勤場所、自動車通勤/自転車通勤などの配慮などが必要でした。テレワークであれば、通勤の負担・懸念を解消でき、自宅でも働くことができる可能性が広がり、一部の障害では通勤時の感染症リスク回避も大きいです。

就業環境のメリット

職場環境においては、バリアフリー環境の設置が賃貸オフィスなどで環境調整が難しい、感覚過敏の人にとって光や音などが集中力を阻害する、などといった課題に対してもテレワークであれば、環境に問わず就業が可能となり、周囲の環境に影響を受けず、仕事に集中できます。

コミュニケーションのメリット

口頭でのコミュニケーションが難しく、あいまいな指示を理解することが苦手で、周囲の雰囲気で会話がしづらいなどの課題もありますが、テレワークになるとコミュニケーションツールを活用するため、文字のコミュケーションを通じ認識の齟齬を減らせる、周囲環境に影響を受けずにメッセージをやり取りできる、文字でいつでも再確認ができるなどといったメリットがあります。

双方向のメリット

テレワークは障害者にとって働くメリットがありますが、企業のテレワーク求人が通勤の求人に比べ少ないため、企業は母集団形成がしやすくなります。また、通勤に困難がある方、障害特性によりオフィス勤務に困難がある方、勤務先の企業から遠隔地に住む地方在住者なども採用対象になり、採用の可能性が拡大します。合わせて、就業環境が企業・障害者の双方にとってメリットのあるものになるので定着率の向上に大きくつながります。

２．テレワーク雇用をしている業務や職種の拡がり

障害者の雇用・テレワークの雇用を考える際に、業務の切り出し・棚卸のプロセスを経て、社内の生産性向上を踏まえて障害者に任せる業務や職種を検討していく必要があります。
　以下に3点の視点のポイントを紹介します。

１．外注している業務や派遣で担っている業務を内製化できないか
２．やりたいと思いつつ、マンパワー不足で優先順位が下がっている or 手をつけられていない業務がないか
３．業務の効率化につながるような業務はないか

このの切り口と、「組織全体のための」業務切り出しを行うことは、障害者雇用促進だけではなく、社内の働き方改革・生産性向上といった様々なメリットに繋がります。

具体的な事例

　例えば、介護事業を運営する企業において、WEBマーケティングを強化していくにあたりマーケティング人材を確保したいというニーズがありました。しかしながら、WEBマーケティングの人材でスキルの高い・経験のある人材の確保が難しいため、業務の棚卸しを行う中で、「音声情報のライティング」「SNSのフォロワー増加業務」「文章検閲・校正作業」などといった比較的経験・知識がなくても対応できる業務を切り出し、選定しました。結果としてテレワークでWEBマーケティング未経験者の障害者を雇用し、上記業務に従事してもらうことに繋がりました。障害者がその業務に従事することで、当初からいたWEBマーケティングの担当者の作業工数を減らし、担当者がより生産性の高いマーケティング業務に集中することで、生産性の向上を障害者雇用×テレワークを通じて実現できた事例などもあります。

３．テレワーク雇用の環境整備と求職者に求められる力

障害者のテレワーク雇用を推進するための環境整備として、以下のような点が必要となります。

　テレワーク雇用を推進するためには、企業の環境整備と求職者の力を高めることの双方が車輪となり組み合わせることが大切です。

　以下にそれぞれの視点についてご紹介します。

企業の環境調整

・社内の理解促進

・雇用者の役割と責任の明確化

・雇用管理のためのシステム環境整備

・社内の運用体制

・社内制度・社内ルールの明確化

・戦力化の体制

　テレワークという職場と離れた場所で働いても同じ社員であるという認識と、企業は障害者をテレワーク下で雇用管理し、生産性を発揮してもらえる環境づくりが非常に大切になります。その点から、なぜ企業が障害者を雇用し、合理的配慮をするのかを経営者や現場の方々が大前提理解する必要があります。その上で、障害者も社員である以上、事業の成長に貢献してもらう必要があり、障害者の業務における役割と責任を明確にし、評価できる体制を構築しましょう。また、職場と離れた場所で働くことは、通勤と違い、常に就業状況を把握することが難しくなります。雇用管理の観点からも、システム（テクノロジー）の力を活用し、就業状況の見える化も図っていきましょう。そして、障害者が活躍し、安心して働けるような社内制度やルールなどマネジメント体制を明確にした上で、受入側・当事者が迷いなく業務に従事できるような形を創っていくことが大切です。

求職者に求められるスキル

・職業準備性

・体調管理、自己理解

・基礎的なビジネスマナー

　テレワークでの就業は通勤と異なり、企業が障害者を常にサポートできる体制を構築することが難しいです。そのため当事者には、ある程度の業務上の自立を求められます。職業準備性だけでなく、協力要請を自分から周囲に出せるための自己の障害に対する自己理解が重要になります。受け入れ側にとって、常に障害の状態をウォッチできないため、当事者自ら情報を発信することが求められます。また、業務プロセスも見えにくくなるため、自分から報連相をし、業務進捗を報告・相談するというようなビジネスマナーがとても大切になります。ＰＣスキルなどの業務スキル以上に、上記のような基礎的なスキルがテレワークに置いて重要であると我々は考えていますし、業務スキルが高くても、上記のような基礎スキルがおろそかになる場合、結果的に定着に繋がらないケースも散見されます。基礎的なスキルは、就労支援の場でも当たり前に重要視されていますが、テレワークになるとその重要性が更に増すと考えて頂ければと思います。言い換えると、就労の現場で当たり前に大切なことをどれだけ徹底的に身に着け職場で実践できるかが、テレワークの就業を成功させる上で大切なことであるということが言えます。

みんなのテレワーク就労推進